AGITATION#11「CYBERNE/S.M.D Records」

大阪でCYBERNE(サイバネ)というバンドのベーシストをしている中村です。
今回の「BAYSIDE×GENOCIDE 2008」には大阪からは唯一出演させていただくという事で、CYBERNEの音源をリリースしている大阪の「S.M.D Records」のバンドなどをここで紹介したいと思います。
まず大阪のシーンというと、GRIND OSAKAやクラストなどのハードコア勢のイメージが強いかもしれない。実際「シーン」として捉えると、S.M.D Records周辺のバンドは頻繁に共演しているわけでもなく、その音楽性を大きい枠であってもひとつのジャンルに収集することが困難であるため、シーンとして認知されているかどうかも怪しいところである。あえて言えばシーンではなくそれぞれが独自の信念と方法論を持って活動しているバンドの集合体であろう。だからこそ、メディアを介して語られることは少ないと言える。わかりにくいかもしれないが、いくつかのバンドの活動や歴史を通して、あまり紹介されることのないS.M.D Recordsという括りについて紹介したいと思う。
毘盧釈那-BIRUSHANAH-
まず、S.M.D Recordsを運営しているのは毘盧釈那のベーシストであり、一時期Corruptedでベースを弾いていたこともある草魚氏。かつて鐵男というバンドで活動しており、解散後、毘盧釈那を結成。和音階と祭り囃子、スラッジ的な重低音、複雑で長大な曲構成、メタルパーカッションや和太鼓の導入など、世界中どこを探しても似たバンドが思いつかない程、超オリジナルな世界観を持ったバンドだ。
メンバー構成と音楽性の変遷が激しく、当初はドラムとベース、そしてツインボーカルという構成だったが、その後ベースとドラムの二人になり、そこからメタルパーカッションが加入、さらにギターと和太鼓なども加え、一時期はツインフレットレスベースの六人バンドになっていた。現在はドラム、フレットレスベース(兼・和太鼓)、ギター、メタルパーカッションの四人編成に落ち着いている。当然の事だが楽器が変われば曲も変っていくため、その度にやはり一から音楽性を再構築していく作業が必要である。個人的にはベースとドラムのみになっていた暗黒ジャパニーズスラッジと言える時期の純度というか完成度の高さは今でも忘れる事ができないが、現在の編成でex.鐵男、CAVOのISO氏がギターボーカルとして加入したことにより、音楽的にも歌詞の面でもこれまでにない広がりと深みが生まれ、今までの毘盧釈那の歴史で最高のラインナップに進化したと言える。
しかし、毘盧釈那がS.M.D Recordsよりリリースした単独音源は最初期のツインボーカル時代の音源「淘汰」一枚だけであり、オムニバスを含めても草魚氏一人のコラージュ的作品が収録されているのみだ。毘盧釈那が現在の編成になってからのリリースは海外のレーベルからである。主だったものを挙げると、2007年にオーストラリアからリリースされた「赤い闇」、これは2008年にUS盤としてLEVEL PLANEからもリリースされている。また、LEVEL PLANEからは近々Drain the Sky(His Hero is Goneの元メンバーなどから構成されるバンド)とのSplit LPがリリース予定となっており、ヨーロッパにも流通する予定だ。アマゾンなどで検索すると輸入盤しか表示されないのである意味面白い。
S.M.D Recordsの一つの特徴としては、海外のバンドの音源をリリースしたり、海外のバンドを招聘すると同時に、日本のバンドが積極的に海外でツアーをするという活動が挙げられるが、毘盧釈那はこれまでオーストラリア、アメリカ、ヨーロッパなど幾度もの海外ツアーをこなし、成功を収めている。今回の「BAYSIDE×GENOCIDE 2008」が行われる頃もヨーロッパで一ヶ月近く、10カ国以上の大規模なツアー中であり、多分スペイン…とかその辺り。このヨーロッパツアーの様子はDOLLの二月号に四ページにわたり掲載される予定だとか。年明けにはアメリカのKYLESAというバンドと日本をツアーする予定もあるので、関東の方も機会があれば是非触れて頂きたい。

palm
S.M.D Recordsのバンドの中で現在最も一般的な知名度と活動の幅の広さを持つと思われるpalm。当初から根底にニュースクールやカオティックと言われるようなメタリックなハードコアの要素を持ちながらも、次第にサザンロックやストーナーのような泥臭くアーシーなリフと大胆にミックスされたある意味クロスオーヴァーな楽曲スタイルを確立していく。時にスピードで攻め立て、時にじらしながら頂点に上り詰めてゆくような、ヘヴィでありながら広がりをもったある意味ポップな音楽だが、実のところ相当水準の高い演奏力とパフォーマンスで、絶妙のグルーヴと不自然さのない独自性を放つ事ができている。ライブでの一体感はとてつもない。
現在までPVとショートムービーが収録された「Spin the Imagination」、1stフ
ルアルバム「palm」をS.M.D Recordsよりリリース。また、メンバー構成は全く同じだがSTEM OF PALMという別名義でEPを発表(現在メンバーは変わっている)。
このEPではスピリチュアルで内省的なサウンドを提示し、自主リリースをするなど、前述のDVDと合わせてチェックしてみると彼らの内なる方向性と世界観の深さが見てとれる。今後はメンバーチェンジ後初の作品リリースに向けて製作中だ。
国内ではこれまでHawaiian6やElectric Eel Shockと共演をする一方、Edge of
Spirit、Viscera Infestと交流を持つなど、多種多様なジャンルを超えアンダーグラウンドとオーヴァーグラウンドを繋ぎ合わせる事のできる貴重な存在のバンドと言えよう。今まで二度のオーストラリアツアーを行っており、その流れで意気投合したオーストラリアのThe Rivalryと今年二月に日本国内でツアーは記憶に新しい。このツアーの成功でこれまで以上に勢いを得、満を持して今年の11月にはUKのRaging Speedhornを招いて日本ツアーを敢行する予定だ。このツアーでRaging Speedhornを食ってしまうほどの活躍を期待したい。

mu-neujohn
今年の四月にS.M.D RecordsよりフランスのNesseria、CYBERNEとのスプリットCDをリリースしたmu-neujohn。ジャンルはバラバラであるにしろ、一貫してヘヴィでダークな大きい意味でのハードコアをリリースしてきたと言えるS.M.D Recordsの中で、彼らは活動の場も音もこのレーベルのカラーからすると異質な存在だ。ドラム、ベース、ギターのスリーピースで、NEU!やAsh Raのようなジャーマンプログレ等から影響を受けたと思しき浮遊感のあるダンサブルでトランシーな楽曲でありながら、変則的で大胆なフレーズとハードコアバンドにも劣らない強靭なビートを兼ね備えている。これまでハードコアのみならずオルタナやクラブイベントなどとも親和性のある活動を展開してきた。デジタル化されたようなエフェクトボイスが入っているのみで基本的にはインストに近いため、何の事前情報もなく音源を聴いた場合、どこの国のいつの時代のバンドか言い当てるのは難しいと思う。つまりどこにも属している感じがせず独自の音楽観を提示してくるバンドという事だが、このようなバンドをリリースできる点こそS.M.D Recordsの強みと言える。
ドラムのmiya-aki氏は神戸のnitro mega prayerでは活動停止まで数年間参加、そ
の他にもAcid Mothers Templeやガールズロックバンドのwater fai(現在のドラ
マーはSUSPIRIA等の青野氏)など多彩なバンドで活動する傍ら、ライブハウスでエンジニアとしても活躍しているが、そういった経験もあってか、これまでのリリースしてきた音源は全て完全自主録音・ミックスで製作されている。近年の作品はPC内で作られたとは思えないハイクオリティで臨場感のあるサウンドプロダクションだ。リリース作品は自主のCD-Rが数枚と神戸のクッダチクレロ(解散し現在メンバーはヨダレサゴ、Nasca Car等で活動中)とのスプリット、そして前述のS.M.D Recordsからのスプリットとなっている。このCDリリースに伴いNesseria、CYBERNEと日本国内でツアーを行ったが、2009年の2月から3月にかけ、今度はCYBERNEと共にヨーロッパで約10箇所のツアーを予定している。彼らの音がヨーロッパでどう受け入れられるのか楽しみである。

CYBERNE
最後ですが、手前味噌になるので手短に。"アグレッシヴ・サイコリズム”と称する、あらゆるタイプの凶暴な音楽を強引にブチ込んだようなバーストジャンクサウンドを展開する。 予測不可能で大胆極まりないリズムと攻撃的な瞬発力を併せ持ち、『プログレの皮を被ったケダモノ』、『メタル化したジーザスリザード』等と評される。本人達はとにかくジャンルとか無関係に自分が楽しくカッコイイと思える音楽をやりたいと思っている。元々はスリーピースであったが現在はギター二人、ドラム、ベースの四人。当初メンバーが定まらず、まとまった活動ができる状況ではなかったが、2006年ごろにメンバーが固定し活発に活動できる状態となる。スリーピース時代にギターのタナカが和製エクスペリメンタルドゥームバンドの緑血に加入し活動していたが、その後緑血のオリジナルメンバーでギターボーカルを務めていたアキラが逆にCYBERNEに加入、ギターが二人の編成になった。
現在までデモテープとCD-R、前述のNesseria、mu-neujohnとのスプリットCDをリリース。これまでにメタル、ハードコア、激情、オルタナ、ジャンク、ノイズ、スカム等々共演を重ねるが、ホームグラウンドのシーンというものなどないと自覚しており、基本はいつもどこでもアウェイ。これまで二度、中華人民共和国でのツアーを敢行。2009年の2月から3月にかけ、mu-neujohnと共にヨーロッパツアーの予定。今回の「BAYSIDE × GENOCIDE 2008」では初めて見る方も多いかもしれないが、気になったら音源、物販などもチェックしてみて欲しい。
この他にも、20代前半ながらNEUROSISやISISなどを思わせる日本人離れした完成度の高い楽曲を放つkill my bleeding smile、今年ENSLAVEとのスプリットもりリースしオーストラリアツアーを成功させた札幌の激情ダーククラストREALIZED、また惜しくも今年2月に解散してしまったが前述の緑血などいずれも個性的なバンドをリリースしている。また、オムニバスへの参加バンドやリリースはなくとも繋がりの深いバンドなどを挙げるとキリがないのだが、最初に述べた通り、独自の信念、方法論、価値観を貫く者達が繋がる場としてS.M.D Recordsは成立していると思う。
また、年末にもはや恒例とも言える「BISHAMON FESTIVAL」というS.M.D主催の企画があり、心斎橋の新神楽、HOKAGEという同じビル内の二つのライブハウスを使用してオールナイトで行われる。今回紹介した4バンドを含む総勢24組が参加。いい機会だと思うので、全国各地から大阪で起こっている事を是非目撃しに来て欲しい。
(Text by 中村/CYBERNE)
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